繊維製品や水産物は米国のセンシティブ品目であるため確実に除外とならないなど、個別に見ると関税を課される品目はある。しかし国単位で見ると、実効負担は表面的に言われる程ではなく、相互課税は輸出をくじく効果を持ったとは言い難い。2025年の対米輸出額は、タイ44.2%増、ベトナム42.0%増など、どの国でも前年比で大幅に伸びた。2025年8月下旬から相互関税率を50%に引き上げられたインドですら、スマートフォンの輸出は3倍に増えるなど、年間では18.9%増となった。例えばPCにおいては、HPやレノボなどが中国依存を下げてベトナムなどに移管した点が報じられ、それがベトナムの対米輸出増に表れている。PCが除外となる扱いは中国製品でも同じで、実は中国とASEANで税率の差はない。それでも移管が起こっているのは、サプライチェーンの分散化や将来の関税賦課を見込んでのことと考えられる。また、除外品目だけ伸びたように受け取られがちだが、非除外品目に限定しても、例えばタイが前年比7.8%増(LED器具、エアコン、自動車部品など)となるなど、ほとんどの国で対米輸出は増えた。
なお、この除外品目は、2月24日から課される通商法122条に基づく一律10%の関税においても設けられ、相互関税時代と概ね同じ品目が選ばれている(木材、柑橘ジュースなどは今回漏れた)。従って、対米輸出の勢いは2026年に入っても全体としては衰えていない。
ASEANの対米輸出が伸びた中、唯一の例外はシンガポールで11.8%減となったが、これは感染症用検査キットの大幅減(115億ドル→70億ドル)が効いている。米国側から見ると、シンガポールが減った分、引き換えにドイツからの輸入が埋め合わせるように増えており、医薬品企業が供給元を振り替えた模様。シンガポールの2025年の対米輸出は芳しくなかったが、対世界輸出は12.1%増と大きく増えた。シンガポールの場合、相互関税のもとでも、対米輸出における実効平均関税率は2.9%(2025年12月)であり、ASEAN他国の8~10%前後と比べてはるかに低い。しかしシンガポールが持つ疑問は関税負担の軽重の問題でなく、自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に対し関税を課すとは何事かという点にある。
相互関税を一律10%の関税に置き換えた影響は3月の貿易統計に表れ、各国の対米輸出に際しての実効平均関税率は大きく減少した(図表2)。フィリピンを例にとると、対米輸出に際しての実効平均関税率は2月の7.5%から3月は5.1%となった。インドについても、50%が課されていた2025年12月は20.5%だったが、18%へと下がった2月には15.0%へと、3月は8.3%へと軽減された。ここで課される関税は、相互関税のみならず、通常かかる最恵国待遇(MFN)税率や、232条に基づく個別品目(鉄アルミ、自動車部品、家具など)も含まれる。同じ10%に戻ったから3月と2025年5月の水準が等しくなるかというと、必ずしもそうならない。