三つ目はASEAN各国の経済政策運営の難しさである。2025年は各国ともに外需の落ち込みによる景気下支えのため各中央銀行が利下げを実施した年となった(図表2)。また、景気対策・物価高としての経済対策も各国により組まれておりマレーシア、タイなどで現金支給や補助金調整などがおこなわれた。
ただし、これらの政策運営には一定の留意が必要である。まず、利下げは通貨安定との微妙なバランスが求められる。たとえばインドネシア中央銀行は2024年より計6回にわたり利下げを実施しており、さらなる利下げが予想された2025年10月、11月の定例会合において2会合連続で据え置きを決定した。背景として、足元の経済対策が財政拡張的であるとの懸念が高まっており対ドルで通貨安が進むルピアの防衛も本決定の思惑としてあったと想定される。また、タイ中央銀行は、2025年10月の政策会議では新任の中央銀行総裁のもと、利下げが予想される中、基準金利を1.5%に据え置いた3。同国はもともと利下げ余地が限られるのも実態であり、今後も薄氷を踏むような政策運営となろう。
また政府の経済政策についても財政規律とのバランスが必要である点は無視できない。マレーシアはすでに公的債務が法定上限(GDP比65%)に近く、財政規律上の懸念が生じる。インドネシア政府も2025年9月に反政府デモ対応の一貫として、16.23兆ルピアの総合経済対策を公表したものの財政運営への不安が市場で顕在化し通貨安の遠因となっている。
世界経済の不確実性による影響も無視できない。米国が利下げを志向する中でもインフレの鎮静化がなかなか収束せず金利の高止まりが長期化している。また、中国のマクロ経済や日銀の利上げの動向も含め、これらの要素が予期せぬ事象を生むリスクも想定され、各国政府が十分な政策対応を適切に行えるかが注視される。