2026年5月号(No.666)バックナンバー
着任のご挨拶(YAMAZAKI MAZAK SINGAPORE PTE. LTD.)
このたび理事を務めさせていただくことになりました、YAMAZAKI MAZAK SINGAPORE PTE. LTD.の板津と申します。微力ではございますが、少しでも皆様のお役に立てるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
弊社は工作機械メーカーで、シンガポールでは1988年に法人を設立し、本年で38年目を迎えます。現在、東南アジア、インド地域統括本部と生産工場を運営しております。工作機械は一般にはあまり馴染みのない製品かもしれませんが、金属や樹脂などの素材を刃物で削り出し、部品や製品の形状を作り出す機械で、あらゆる工業製品の製造に何らかの形で関わっています。機械を作り出す機械という意味で、マザーマシンとも呼ばれます。世界全体でも年間売上規模は約15兆円程度とされるニッチな市場ですが、日系企業が強みを持つ分野の一つでもあります。また、ものづくりに携わる幅広いお客様とつながることができる点に、この仕事の大きな醍醐味があると個人的に感じております。
東南アジア地域における工作機械業界の市況にも少し触れさせていただきます。2010年代前半は、原油価格の上昇を背景に、深海油田掘削関連向けの需要が大きな柱となっておりました。しかし、その後は原油掘削関連投資が落ち着き、工作機械需要も減少しました。さらに、規模の大きい自動車産業においても、中国勢を中心としたEV化の進展に伴い、ここ数年の投資は総じて低調に推移しています。
その一方で、AI需要の拡大を背景とした半導体関連投資の増加により、半導体製造装置業界からの強い需要が生まれています。とりわけ、半導体回路の微細化に伴って製造プロセスで真空環境の重要性が高まり、真空チャンバーと呼ばれる大型のアルミ・ステンレス部品の加工需要が急増し、現在では東南アジアにおける工作機械ビジネスの主力の一つとなっています。
このように、工作機械業界には、その時々の成長産業に適した製品を迅速に提供していく使命があり、加速する技術進化への対応がますます重要になっています。日本工作機械工業会の受注は2026年3月に単月で過去最高を更新し、年度通算でも高い水準を記録しました。今年度も堅調な推移が見込まれる一方で、シンガポールでの工場運営はシンガポールドル高の影響を受け、厳しい環境が続いております。
続いて、私自身のことを少しご紹介させていただきます。入社以来、機械設計業務に20年以上従事し、2003年からは英国の欧州本部に赴任して、マーケティングおよび欧州市場向け製品の開発業務を5年間担当しました。その後帰任し、生産部門を約10年担当したのち、コロナ禍が収束に向かい始めた2021年9月にシンガポールへ赴任し、現在で4年半が経ちました。
シンガポール赴任以前は東南アジアとの関わりが薄く、2011年にシンガポールとジョホールへ1週間出張したのが唯一の経験で、2度目の東南アジア訪問が今回の赴任となりました。2021年9月にチャンギ空港へ到着した際には、空港内の動線がパイロンで厳格に区切られ、防護服を着た多くの職員に見守られながら、そのままバスでホテルへ移動し、2週間の隔離生活に入りました。現在のにぎわいからは想像できないほど静まり返った空港の様子は、まるでSF映画の一場面のようで、今でも鮮明に記憶に残っております。
また、赴任当初は現地での会話がなかなか聞き取れず苦労しましたが、その後、シンガポールの卓越した国家戦略、ビジネスのスピード感、合理的な仕組みや考え方に触れ、多くを学ばせていただいております。今後、皆様との交流を通じて、少しでもお役に立てるよう努めてまいります。
最後になりますが、会員企業の皆様、ならびに事務局の皆様のますますのご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。