はじめに
近年、洪水・土砂災害等の自然災害は増加し、人的被害が抑制される一方で経済損失が拡大しています。ADRC「Natural Disaster Databook 2024」1によれば、世界の自然災害は2024年に360件(30年平均332件)と増加し、経済損失は2,416億ドル(同1,320億ドル)へ拡大しました。アジアでも2024年は148件(同132件)で、水関連災害の増加が目立ち、経済損失は約319億ドルに達しています。さらにUNDRR「GAR2025」2は、直接損失が1970〜2000年の年700〜800億ドルから2001〜2020年に1,800〜2,000億ドルへ倍増し、公式統計に出にくい頻発災害・干ばつ・健康被害・避難等の「見えないコスト」を含めると災害コストが年2.3兆ドル規模(直接損失の約10倍)に及ぶと試算し、「Resilience Pays(レジリエンス投資は割に合う)」を掲げています。Swiss Re3は、2025年の自然災害による保険金支払額が1,070億ドルと、6年連続で1,000億ドル超になる見通しを示しています。
東南アジアにおいては、2025年11月にラニーニャ下で複数の気象要因が重なり、ベトナム・タイ・インドネシア等で洪水・土石流が発生、同地域でも大規模水災が起こり得ることが改めて示されました。さらに、直接被害に加えサプライチェーン寸断やサービス中断等の間接コストを含む評価が重要であり、製造業・インフラ事業者には仕入先・物流・人材まで含めた連鎖リスク把握が求められます。本稿では、こうした世界的な潮流を踏まえつつ、とりわけ洪水・土砂災害リスクが高まる東南アジアのリスク構造と各国の共通課題を整理しつつ、防災・減災ビジネスやインフラ分野における日本企業の協力機会を展望します。
