今月号では、シンガポールの未来を形づくる二つの重要なテーマを取り上げました。
一つは、生成AIやデータ活用を背景に急速な進化を続ける「ヘルステック」、もう一つは、AI時代の人材戦略として注目を集める「スキルベースの組織・人材改革」です。ヘルステック分野では、医療の質や効率向上だけでなく、高齢化や医療費上昇といった社会課題への対応が進み、シンガポールが東南アジアのイノベーション拠点として存在感を高めています。
また、人材マネジメントの世界では、「職務」や「所属」ではなく「スキル」を起点に組織を設計する考え方が広がっています。人・外部リソース・生成AIを含めて「何ができるか」を可視化し、Build(育成)、Buy(採用)、Borrow(外部活用)、Bot(AI活用)という選択肢を最適に組み合わせることが、企業競争力を左右する時代になりつつあります。
一見すると異なるテーマのようですが、両者に共通しているのは「データとテクノロジーを活用して限られた資源の生産性を最大化する」という視点です。高齢化による労働力不足、人材獲得競争の激化、生産性向上への期待など、シンガポールの企業が直面する課題は今後さらに大きくなるでしょう。その中で、医療分野におけるデジタル化の進展や、スキルを軸とした組織変革の取り組みは、多くの日系企業にとっても示唆に富むものと考えます。
変化のスピードが加速する時代だからこそ、企業には従来の延長線上ではない新たな発想と挑戦が求められています。本号が、皆様の事業運営や組織づくりを考える上での一助となれば幸いです。
(編集後記担当:MITSUBISHI CHEMICAL SINGAPORE PTE LTD 清水 美保)
