2025年7月号(No.656)バックナンバー

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着任のご挨拶(TOKIO MARINE INSURANCE SINGAPORE LTD)

シンガポール日本商工会議所 理事
TOKIO MARINE INSURANCE SINGAPORE LTD
Managing Director

西條 秀作

シンガポール日本商工会議所の皆様、このたび理事を務めさせていただくことになりました東京海上シンガポールの西條と申します。この場をお借りして、ご挨拶申し上げます。

私は2001年に東京海上日動火災保険株式会社に入社し、一貫して企業向け損害保険の営業・業務支援部門に所属。国内所在リスクのみならず、国際貿易に関する海上保険や企業のグローバル事業をお支えする業務に携わって参りました。勤務地は東京・大阪・名古屋を経験した後に初めての海外赴任で2022年3月にシンガポールに着任をしております。当地では、シンガポールとブルネイの2ヶ国を担当し、日系企業の皆様への総合的な損害保険やリスクマネジメント強化のご支援を行っております。

さて、シンガポールはまさに建国60周年の節目を迎えようとしていますが、この歳月を、多くの方が「たったの60年」と感じているのではと思います。

私は高校時代、北京の現地校に通っていた経験があります。日々の授業や放課後の会話を通じて、同世代の中国人と直接ふれあい、価値観や文化の違い、そして共通点を体感しました。その経験を通して、中国という国のスケールの大きさと、個々の人々の温かさや向上心を肌で感じたことは、今でも自分の国際感覚を構成する一つの大きなピースとなっています。北京の中心部、東城区にある高校では近代化のただ中にある中国社会の勢いと、そこで生きる若者たちの競争心、そして何よりも「変化を当然のものと受け入れる空気」に触れました。13億を超える人々が生きる大国において、個人がどうやって自分の居場所をつくり、生き抜いていくか。そこには激しさと同時に、柔軟さが必要でした。

そして今、社会人としてシンガポールに関わるようになって感じているのは、この国もまた「変化を恐れない」という点で、中国と共通した精神を持っている、ということです。しかも、それを大規模な人口や広大な国土ではなく、洗練された制度設計と徹底した計画実行によって実現しているという点で、非常にユニークです。

1965年の独立当時、シンガポールは東南アジアの中でも決して豊かな国ではありませんでした。しかし、国家主導の住宅政策、英語を軸としたバイリンガル教育、外資誘致のための法制度整備、そして汚職の排除に至るまで、徹底した合理主義に基づいて国の形がつくられていきました。国民1人当たりのGDPは、独立当時のおよそ500米ドルから、現在では7万米ドル近くに達しています。これは、資源国でなく、面積も小さな国としては驚異的な数字です。北京での日々を思い出すと、都市のスピード感や社会の熱量には圧倒されるばかりでしたが、シンガポールには、計算されたスピードと、将来を見据えた冷静さがあります。熱と冷が同居するアジアのなかで、この国が選び取ってきた「冷静な成長」を、我々日系企業の多くがビジネス機会拡大の好機と捉えこの地に進出し、企業と国が共に栄える循環を生み出しています。

60年は、国の歴史として見れば決して長い時間ではありません。しかしシンガポールはこの60年間を密度の濃い「成長の時間」として最大限に活用してきました。その成功の背景には、明確な国家ビジョンと、そのビジョンを社会全体で共有し、現実的な戦略に落とし込む力があったと言えるでしょう。この成長ファクターは、我々企業の事業活動にも当てはまり、私自身もこの国の発展の歴史と次々と発表される施策に触れることで、これからもたくさんの学びを得てきたいと考えております。

最後になりますが、商工会議所がこれからもオールジャパンの活発な連携機会を生み出す場となるよう尽力させていただきますので、是非ともよろしくお願い申し上げます。また、当地で活躍されている皆様を国内外から支えられているご家族の皆様の益々のご健勝を祈念し、ご挨拶とさせていただきます。

シンガポール日本商工会議所

6 Shenton Way #17-11 OUE Downtown 2 Singapore 068809
Tel : (65) 6221-0541 Email : info@jcci.org.sg

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